大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和35年(ラ)47号 決定 1960年9月14日

抗告人 宮田玉五郎

相手方 隔山弥太郎

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨並に理由は、別紙記載のとおりである。

よつて按ずるに、相手方が抗告人に対する徳島簡易裁判所昭和三四年(ノ)第二三〇号貸金調停事件の執行力ある調停調書正本に基づく強制執行として、昭和三五年三月二五日抗告大方において、徳島地方裁判所執行吏鈴江輝雄に委任して抗告人所有の脱殻機、籾摺機各一台を差押えたことは一件記録に徴し明らかであるところ、当裁判所も原決定の説示するところと同一の理由によつて右各差押物件は民事訴訟法第五七〇条第一項第四号にいう「農業上欠ク可カラサル農具」にはあたらないものと判断するから、右の説示をここに引用する。されば、相手方のなした右差押は適法であるから、抗告人の異議申立を却下した原決定は相当である。

よつて本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、抗告費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 石丸友二郎 安芸修 荻田健治郎)

抗告の趣旨

原決定を取消し右当事者間の徳島地方裁判所昭和三五年(ヲ)第九五号強制執行の方法に関する異議申立は其の理由ある旨の裁判を求む。

抗告の原因

一、原決定は事実の認定を誤り法律の適用を誤つて違法不当の決定である。

二、本件物件は農家にとつては必要欠くべからざるものなる事を認めながら短期間を限つて使用するものであり必ずしも個人所有する必要はないとの見解のもとに抗告人の異議申立を却下した。然しながら農業上欠くべからざる農具は債務者の農業経営上の形体は問はないのであるし使用期間にも何等制限はないのである。

一時的に之を営むと永久的に之を使用するとは拘らないのである。

此の点原決定は之を誤つたものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例